築地市場移転問題と鮮魚ECの未来-後編:築地市場をEC化せよ!

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鮮魚ECの未来(アイキャッチ)

昨年話題となった築地市場移転問題。1月6日に公開した前編では楽天市場の年末商戦のデータ分析を行い、ランキング上位のほとんどが冷凍・塩干品で鮮魚が上位に食い込んでいなかった事が分かった。そんな中、築地市場の仲卸業者から組織される、東京魚市場卸協同組合の公式ECサービスとして先月ローンチし、テレビ東京系ガイアの夜明けにも登場した、いなせり株式会社の萩原CEOに今後の鮮魚ECの未来についてインタビューを行った。
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事業概要について

記者:事業の概要について教えてください?

萩原CEO:築地市場の仲卸業者約600社が加盟する東京魚市場卸協同組合の公式ECサービスです。各仲卸業者さんが弊社のプラットフォームにスマートフォンのアプリを用いて商品を出品頂き、飲食店の方々に購入いただいています。午前2時までに発注頂ければ、即日の配送を可能にしています。(※出品者はアプリのみ、購入者はインターネットブラウザ対応)
鮮魚ECの未来-ポジショニングマップ

記者:即日配送とのことですが、エリアはどのあたりまで可能なのでしょうか?

萩原CEO:現在は東京23区と多摩エリア、あと栃木県の宇都宮です。配送エリアは試験配送を繰り返しながら順次拡大させていく予定です。

記者:宇都宮?って意外ですけど、そのエリアを攻めようと考えた理由は何かあるのでしょうか?

萩原CEO:実は宇都宮は、日本で一番お寿司屋さんが多い地域なんですよ。もちろん宇都宮にも中央卸売市場はあるのですが、「築地の魚を手に入れたい」というニーズはあるのではないかと思い、ターゲットに定めました。

サービスローンチまでの紆余曲折

記者:構想からローンチまで約2年かかったとのことですが、事業開発段階で難しかった点はありましたか?

萩原CEO:やはり、組合側との交渉に時間がかかりました。2歩進んで、3歩下がるそんな交渉の連続でした。伝統ある市場ですので時間がかかったことはある意味必然であったと思いますが、最終的には想いが伝わり公式サービスとして提供することが決まりました。
鮮魚ECの未来-いなせりサービス画面

記者:一時期DMMグループの亀山会長も事業設立にご尽力されたようですが?

萩原CEO:亀山さんを朝早く起こして築地に連れていきましたね。結果からすると、今回の事業は日本エンタープライズに出資をしてもらい事業をスタートさせています。

記者:当初は築地ではなく、豊洲移転を見越してサービス開発をされてきたそうですが、やはり影響は大きかったのでしょうか?

そうですね。築地移転延期が決まってすぐに、東京魚市場卸協同組合の伊藤理事長に電話で相談しました。結局、豊洲市場のオープンがいつになるか分からないので、暫定的に、築地市場でサービスを開始しようという結論になりました。もちろん我々も、想定していたとのはいえ混乱しましたし、我々以上に大きな投資をしている仲卸業者さんの混乱ぶりは大きかったと思います。豊洲では、いなせり用の集荷スペースを作っていただいたのですが、築地には当然そんなスペースは無く、そういった段取りも色々大変でローンチ当初は思ったように荷物の配送ができませんでした。

記者:鮮魚流通のEC化というプロジェクトは個人的に本当に難しい事だと思いますが、どのような展望をお持ちですか?

萩原CEO:今回、東京魚市場卸協同組合さんと組んだ理由は、彼らの目利きの力に惚れたからです。産地直送の鮮魚はコンセプトとしてはとても大事ですが、中には買い叩かれている漁師さんも存在します。本来漁師さんの取り分を確保するために始まった制度なのに本末転倒になってしまっている点も多い。築地に入ってくる魚を目利きのプロである仲卸業者に選別させ、競合他社が攻められていない地域に展開していけば需要は大きいと考えています。
オフレコが多くて記事にできないかもしれないですが、とにかく期待して頂ければと思います。

記者:答えにくいことかもしれませんが、現在展開されている飲食店(toB)向け以外に展開されている予定はありますか?

萩原CEO:ノーコメントにしたいところなんですが、もちろん興味は持っています。しかしながら、BtoC商材の流通は様々な障壁があってそこを乗り越えて行けるかを含め検討中です。

なぜ鮮魚の消費者向けEコマースは発展していないのか?

前回の分析で楽天市場の「魚介類・シーフードカテゴリ」では、カニや牡蠣などの冷凍品がランキング上位を占めており、鮮魚の姿はなかった。この理由は様々あるが以下の可能性が高い。
1. SCM(サプライチェーン・マネジメント)の問題
個人向けに鮮魚の発送を行った後、荷主の不在が続いた場合、配達日がずれ込みクレームが発生し赤伝(返金処理)の対象となってしまう可能性が高い。
2. 設備投資の問題
個人向けに鮮魚を販売する場合、魚を丸のまま納品する事は難しく、三枚卸しなどの加工が必要となる。三枚卸しとなればそれなりの加工場が必要となり大掛かりな設備投資が必要となる。(もちろん工夫次第で設備投資無しでも可能にする方法はある)

下記のポジショニングマップでも分かる通り、鮮魚EC系ベンチャーの多くがBtoB市場で激しい戦いをしていると予想されるが、中には路面店開発へ路線を切り替える企業やC向けマーケットを開拓しようとYahoo!ショッピングに出店する企業も出てきている。Amazonも生鮮ECへの本格参入を表明しており、このマーケットは戦国時代に突入する予感がある。白熱する鮮魚ECから目が離せない。
鮮魚ECの未来-ポジショニングマップ

この分析に用いたデータについて

この記事は株式会社アドウェイズ(以下アドウェイズ)・ADWAYS TECHNOLOGY LIMITED(以下アドウェイズテクノロジー)が提供するECデータ推計サービス 「Nint(ニント)」に基づき作成されています。記事中の数値はすべて「Nint(ニント)」 が独自のビッグデータ技術を用いて算出した推計値となり、紙面の特性上詳細なデータは省略しております。より詳細なデータをご希望の方や執筆記事にご意見のある方は、こちらからお問い合わせ下さい。なお、上記に展開されているすべての知的財産権等はアドウェイズ・アドウェイズテクノロジーが保有しております。またこの記事の執筆にあたり参考とした各サイトのクリエイティブなどは該当する各団体が権利を保有しております。
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