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2016年の楽天市場をデータから振り返る

#ECデータ

国内のBtoCのEC市場規模は依然として前年比4~5%程度で右肩上がりの成長を続けており、楽天市場はその伸びを牽引していると言われている。今回は2016年の楽天市場全体の売上推移をデータから俯瞰的に分析する。

※2016年店舗別売上ランキングの図表凡例に誤植があった為訂正を行いました※
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楽天市場の2016年売上推移

まずは2016年の楽天市場全体の売上推移を見ていく。

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楽天市場全体のトレンドとしては、3・6・9・11・12月が前月より売上を伸ばしていることがわかる。前月比で見ると、3月は22.8%増、6月は10.1%増、9月は16.3%増、11月は4.8%増、12月は26.4%増となっている。この主な背景には楽天市場が毎年3月、6月、9月、12月に「スーパーセール」を実施していることが深く関係している。11月から12月にかけては、クリスマスや年末商戦の勢いも合わさり、相乗効果でさらに売上が上がっているのだ。こうして見ると、楽天は3カ月周期で実施される「スーパーセール」を軸に売上の基礎を作っていることが読み取れる。

2016年の商品ジャンル別売上推移

まず各商品ジャンル毎の年間売上高を見てみよう。
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スポーツ・アウトドアが1位、インテリア・寝具・収納が2位、レディースファッションが3位となっている。家電や食品、ファッションなどの商品ジャンルが強いイメージがあったのだが、実際にはスポーツ・アウトドアとインテリア・寝具・収納の2ジャンルが他を大きく引き離しているようだ。次に楽天市場内の商品ジャンル別の売上推移を見ていく。
商品ジャンルを主に「年末にピークを迎えるもの」、主に春にピークを迎えるもの、主に夏にピークを迎えるものの3つに分けて見ていく。
まずは、年末ピークを迎える12ジャンルから見ていく。各カテゴリで売上の多い上位2ヶ月をピンクで、下位2ヶ月を青で示した。
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年末にピークを迎える商品ジャンルには、クリスマス商戦で売上が増加する「ファッション系」「おもちゃ、ホビー、ゲーム」「家電」などのジャンルが目立つ。また特徴的なのが「スマートフォン・タブレット」のカテゴリが10、11月にピークを迎えていることだ。これはスマートフォンの冬モデルの発売が主にこの時期であり、新モデルの発売と旧モデルの割引がこの時期に行われることが影響していると考えられる。
次に、春ピークを迎える12ジャンルを見ていく。
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「インテリア・寝具・収納」「キッチン用品・食器・調理用具」「学び。サービス・保険」など新生活に関わるジャンルの商品が目立っている。また、「TV・オーディオ・カメラ」「バック・小物・ブランド雑貨」などのジャンルはこの新年度の買い替えだけでなく年末商戦も強く、年に2回ピークがあることが分かる。「花・ガーデン・DIY」は5月の母の日やガーデニングを開始する時期と重なることもあって4,5月にピークを迎える。また「スイーツ・お菓子」に関しては、2月も3月や12月とほぼ同じ売上となっており、バレンタインデー、ホワイトデー、クリスマスと商戦のタイミングが一年のうちに3回もある特殊なジャンルといえよう。
最後に主に夏にピークを迎えるジャンルを見ていく。
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全体的に夏を彷彿とさせる商品ジャンルが並んでいる。「ビール・洋酒」「日本酒・焼酎」などは中元にも送られることが多そうだ。「スポーツ・アウトドア」や「インナー・下着・ナイトウェア」に関しては、夏と冬に関連して年2回のピークがきている。また「ダイエット・健康」カテゴリが夏前後に売れているのも面白い消費者心理といえよう。
この3つの表に関して共通して言えることは、季節の商戦をしっかりと見極めて、プラスで楽天スーパーセールの開催を視野に入れた店舗運営を行うことは必須となっているだろう。

2016年店舗別売上ランキング

次に店舗別の売上ランキングを見ていこう。
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2016年の楽天市場で最も売上が高かったのは「楽天ブックス」となっており、2位の約3倍だ。また、「楽天ブックス」1店舗の売上が、1~30位までの合計売上額の約24%を占めていることからも楽天市場内での圧倒的な強さが伺える。2位は医薬品の爽快ドラッグ、3位は家電のJoshin Web、4位は電子書籍のKoboとなっている。上位30店舗の中でリアル店舗を運営している企業は11店舗となっている。楽天はモールの運営を行うと同時に、自社店舗での売上拡大も同時に進めていることがわかる。近い将来、トップ10でリアル店舗を運営していない店舗は全て楽天グループとなっている可能性もありそうだ。商品ジャンル別に分けて見ていくと、家電(TV、カメラ、PC等含む)が9店舗、インテリア(寝具、収納等含む)が7店舗、ファッション(メンズ、レディス含む)が4店舗となっており、楽天市場内でも非常に存在感が高い商品ジャンルとなっているようだ。個別の店舗の特徴としては単価の高い家電やインテリアを扱う店舗が多くランクインしている一方、書籍を扱う店舗が1位、4位と上位にランクインしている。

2016年商品ジャンル別店舗別売上ランキング

次に年間売上の中でも上位3位に入るスポーツ・アウトドア、インテリア・家具・収納、レディースファッションジャンルにおける店舗売上ランキングを見ていこう。
まず、年間での商品ジャンル別トップとなっているスポーツアウトドアジャンルの各店舗の売上ランキングだ。スポーツ・アウトドアでは1位の「ヒマラヤ楽天市場店」と2位の「ナチュラム楽天市場店」の売上が拮抗している。なお、「ヒマラヤ楽天市場店」はスポーツとアウトドア両方の製品を扱っている店舗であり、「ナチュラム楽天市場店」はアウトドアと釣り用品をメインに扱っている店舗である。3位は釣り用品、4位はゴルフと種目別に絞った店舗が続いている。
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続いて、年間での商品ジャンル別で2位となっているインテリア・家具・収納ジャンルの各店舗の売上ランキングだ。タンスのゲン、ロウヤというオンラインでは老舗のインテリアショップが上位を占めている。リアル店舗では圧倒的な存在感を誇っているニトリが楽天内では4位に留まっており、楽天市場で売上を上げるためにはリアル店舗の知名度はそこまで関係ないことが読み取れる。08_%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%86%e3%83%aa%e3%82%a2%e3%83%bb%e5%ae%b6%e5%85%b7%e3%83%bb%e5%8f%8e%e7%b4%8d-1
最後に、年間での商品ジャンル別で3位となっているレディースファッションジャンルの各店舗の売上ランキングだ。リアル店舗で有名なブランド店舗はここでは皆無と言っていいだろう。このジャンルのブランド各社はZOZO TOWNへの出店がメインとなり、あまり楽天市場には出店をしない傾向にあるためだ。いずれも若年層の女性をターゲットにした店舗が上位にランクインしている。
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総括

今回はマクロ的な視点から2016年の楽天市場のデータ分析を行ってみた。時期的に見ると楽天スーパーセールの時期とクリスマスや年末商戦が重なる12月は市場全体で売上が上がっていることがわかる。しかし、中国で行われるシングルデーのような驚異的な売上を記録する形には至っておらず、スーパーセールを年に4回行い売上が分散している日本と売上が一極集中する中国という特徴があるといえよう。
商品ジャンル毎に見てみると、ジャンルによって春や夏頃にピークがあるカテゴリもあるため、取扱商品によった季節戦略が必要になっていることは間違いない。
売上上位の店舗を見てみると、家電ジャンル以外ではリアル店舗を運営していない店舗が目立ち、リアル店舗での知名度はそれほど重要ではないことがわかる。一方で、オンライン上での知名度の獲得にもそれ相応の時間がかかるため、競争が熾烈な楽天市場内で勝ち残るには高度なノウハウが必要になってくるだろう。
今年も1回目のスーパーセールや母の日が終わり、父の日商戦を迎えようとしている楽天市場だが、どのような店舗が売上を大きく伸ばすのだろうか、注目していきたい。

この分析に用いたデータについて

この記事は株式会社Nintが提供するECデータ推計サービス 「Nint(ニント)」に基づき作成されています。記事中の数値はすべて「Nint(ニント)」 が独自のビッグデータ技術を用いて算出した推計値となり、紙面の特性上詳細なデータは省略しております。より詳細なデータをご希望の方や執筆記事にご意見のある方は、こちらからお問い合わせ下さい。なお、上記に展開されているすべての知的財産権等は株式会社Nintが保有しております。またこの記事の執筆にあたり参考とした各サイトのクリエイティブなどは該当する各団体が権利を保有しております。
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